≪「淡路乃国、洲本八狸〜大坂珍道中の段〜」≫

むかしむかし、淡路島は洲本の三熊山にお城があったころのお話

城山の岩陰に芝右衛門という狸の家族がおったそうな。

この芝右衛門、三度の飯より芝居が好きでな。

どこぞで芝居があると聞けばとんでいき、

芝居がない日は、仲間の狸たちと城山で芝居小屋をひらき、

どんちゃん騒ぎをしておった。

そんな芝右衛門の芝居への想いはつのるばかり。

ついには大坂の中座(※)(今の道頓堀あたり)へ

ほんまもんの芝居を見に行くというて、

仲間の狸がとめるのも聞かず旅に出てしもうたそうな。

さて、これよりおおくりします演目は、

「洲本狸の芝右衛門〜大坂珍道中の段〜」

あいつとめまするは、淡路島よさこい衆団「楽衆」でございます。

どうぞ最後までお楽しみくださいませ〜!! ポン♪ポン♪

    大坂中座

大阪府大坂市中央区にあった劇場。道頓堀の近くにあり、浪花座、角座、朝日座、弁天座とともに道頓堀五座と呼ばれ、上方芸能を支えた。

老朽化と営業不振で一時閉鎖れ、その後取り壊された。現在は飲食店が入ったビル「セラヴィスクエア中座」となっており、かつて中座の奈落に祀られていた「芝右衛門狸大明神」が同ビルの4階に移されている。

≪その他予備知識≫

「別当の潮」(べっとうのしお)

 曲中のあおりで、「別当潮の流れにのって、一路目指すは堺の港」というフレーズがあります。ここでいう別当潮とは、淡路島の昔話「別当の潮」を略したものです。

     「別当の潮」って何??

むかし、岩屋の町の高台にある観音寺別当坊さんの犬は、毎日、毎日、板きれをくわえてきては波に乗せ、流れていく方角を見ておった。

そんなある日、いつもののようにくわえてきた板切れを波に乗せたかと思うと、次の瞬間板切れに「ひょいっ」と飛び乗り、どんどん沖へと流れていってしもうた。

 それを見ていた村人たちは、びっくり仰天。きっと波に飲まれ助かるまい、とみなで悲しんでおった。

 それから数日後、岩屋の綱吉という人が商売のことで堺へ行き、町を歩いていると、向方から尾をふって近づいてくる犬がいた。
 「おう、おまえは別当坊さんの犬だ」
 驚いた綱吉だが、とにかく生きとってよかった、とこの犬を岩屋へと連れて帰った。

 その後、村人たちはびっくりしたのなんの。

 「別当坊さんとこの犬が潮に乗って、堺まで言ったそうな」とたいそうな評判になった。そして自分たちも犬と同じように浜から船を出してみると、ロもカイも使わず、流れにみをまかせて楽に堺の港へ着くことができた。
 こうして、岩屋から堺まで開かれた潮路を「別当の潮」と呼ばれるようになったそうな。


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